二人が友達になるまで-8

新聞には「Y町の廃倉庫で火災」という記事が取り上げられていた。四人が意識不明の重体。放火でも何でもなく、不良集団のタバコの不始末が引き起こした事態ということで片がついたらしい。俺の名前も柄本の名前も、あの山瀬と言うらしい…

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二人が友達になるまで-7

コイツらが暇つぶしとは別の用途で、俺に一撃見舞うこと六回。柄本はまだ現れなかった。学校からの距離を考えれば妥当だが、流石に全員飽きてきたらしい。俺を虐待する頻度もめっきり減った。長髪がスタンガンを暇つぶしに弄んでいる。俺…

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二人が友達になるまで-6

脇腹に痛みが走って俺は意識を取り戻した。手を動かそうとしたが、背中の方で拘束されていて全く動かせそうにない。異常な事態が重なったことに混乱しながら目を覚ました俺の目に映ったのは、三つの使い古されたスニーカーと、二つの武骨…

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二人が友達になるまで-4

6月、教室の空気がどうも妙な気がする。湿気や衣替えのせいではない、もうちょっとこう、粘性の高い何かだ。六月、衣替えの時期に変わるのは何も制服の色と素材ばかりではない。新しい学校に馴染むにあたって急造した交友グループが統合…

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二人が友達になるまで-3

「黒沢ー、組もうぜ」メロンパンを分けてから二日後、いつも流動的に組む相手を変えていた柄本が、今日の体育はどういうわけか俺の方に来た。「いいけど」その日からだろうか、俺の隣に柄本がいることが妙に多くなかった。今までがほぼ零…

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二人が友達になるまで-2

「そういえばクラスメイトだったんだね、俺ら。名前聞いてなかったけど、黒沢だっけ?」柄本が俺の机を訪ねてきたのは翌日の朝のことだった。「柄本、手は大丈夫だったのか」聞くと、ひらりと包帯を大げさに巻いた左手を振る。「結局病院…

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